お客様の声

シチリア旅行(2011年12月)をプランニング、ご案内したお客様から紀行文が寄せられましたのでご紹介します。以前北イタリアのツアーで私がご案内したことがご縁で今回のおふたりのシチリア旅行のプランニングとご案内をすることになりました。

旅慣れたお二人はできる限りは自分の足で歩いてみたいというご希望でした。とはいえ、公共交通機関などとても不便なシチリア、すべて個人でみてまわろうとすると時間的なロスもあってもったいない!公共機関の不便なところは、専用車を使って効率よく、都市では二人で自由気ままに。トラパニ県は見所が多いのに公共機関が不便なので、頼りになる明るい人柄の現地ドライビングガイド、サヴェリオさんにご案内してもらうことをおすすめしました。

以下お客様の紀行文です。


 レモンがたわわに実り花々が咲き乱れるシチリア、地中海の暖かい海風に吹かれながら、のんびり旅したい―個人旅行を選んだ背景にはツアーのタイトなスケジュールに縛られたくないという思いがありました。シチリアだけで14日間という行程は、時間をもてあますのではないかと心配もしましたが、今となればそれは杞憂でした。中身の濃い、愉快な旅となりました。


旅のプラン作成

 旅の行程表作成は、タオルミーナ在住10年の通訳・ガイド、原志津子さんにお願いしました。また、ホテルの予約、現地ガイド(陽気なイタリア人、サヴェリオさん)の手配もお願いしました。何を見学し、どこで何を食べるか、移動はどうするかはすべて成り行きといたしました。

 それでも、世界遺産をはじめ神殿やネクロポリ、大聖堂(ドゥオーモ)、宮殿、古い町並みなどたくさんの遺跡を見学し、陽気なイタリア人と片言のイタリア語で会話し、イタリア料理に舌鼓を打ち、思った以上の収穫の多い旅となりました。それでは、私たちの足跡を行程表に沿ってご紹介しましょう。

旅の行程表 こんなところへ行ってきました

11月29日 成田空港 → タオルミーナ、タオルミーナ泊

ローマ経由カターニア空港着、原さんのクルマでタオルミーナへ。


11月30日 終日タオルミーナ観光、タオルミーナ泊

原さんにご一緒いただいてタオルミーナ観光。タオルミーナは、世界中の観光客があこがれるリゾート地。紺碧のイオニア海、その遥かかなたにエトナ山を眺望。


ギリシャ劇場

聖ジュゼッペ教会

メッゾ門

市民公園

イゾラベッラ
12月1日 終日ラグーサ・モディカ観光、タオルミーナ泊

 原さんのクルマでラグーサ、モディカへ。山あいの曲がりくねった道を登りつめると、そこがラグーサ。高台のサン・ジョバンニ広場に続く坂道両側には、バロック様式の見事な貴族の館が連なり(今も住んでいる)、谷をはさんだ下方にはラグーサ・イブラが広がる。


ラグーサ大聖堂
サン・ジョバンニ広場

ラグーサ
貴族の館

ラグーサ
ラグーサイブラの眺め

モディカ
サン・ジョルジョ教会

DOPラグサーノチーズ
12月2日 メッシーナ観光、エトナ山麓アグリツーリズモ泊

海峡の町メッシーナと先端の岬へ。メッシーナ海峡をはさんでイタリア半島は目の前。船で行き来、列車も船に積み込んで移動できる。正午にライオンとにわとりが時を告げる時計を組み込んだ鐘を見学。


メッシーナ海峡

メッシーナ
ドゥオーモ

メッシーナ
オリオンの噴水

メッシーナ
仕掛け時計の鐘楼

アグリツーリズモ
暖炉の前で夕食
12月3日 アグリツーリズモ、エトナ山、カターニア観光、カターニア泊

アグリツーリズモでのんびり朝食。農場で採れた新鮮な野菜やきのこのカポナータ、オリーブオイル、自家製のジャムやはちみつ、パンやソーセージが美味。食後は、広大なオリーブ畑、サクランボ畑を散策。その後エトナ山麓へ。エトナ山の美しいたたずまいは富士山に似ている。夜カターニアを散策。


アグリツーリズモの
朝食

エトナ山
2000m付近

ミロ・100人の騎士の
栗の木

カターニア
ドゥオーモ広場

カターニア
観光路面電車
12月4日 モツィア島、トラーパニ塩田、エリチェ、エリチェ泊

カターニアからブルマン(長距離バス)でパレルモへ。イタリア人のガイド・サベリオさんと落ち合い、カルタゴの大遺跡のあるモツィア島観光、ホイタッカー博物館では『若者像』を見学。トラパニの自然塩田を訪れたあとに、エリチェへ。天空の城・ノルマン城では晴れた日にはアフリカのチェニジアも望めるとか。


モツィア島
カルタゴの大遺跡

ホイタッカー博物館
若者像

トラパニ
自然塩田

エリチェ
ノルマン城

エエリチェ
マトリーチェ教会
12月5日 セジェスタ、セリヌンテ、マザーラ観光、エリチェ泊

サベリオさんのクルマでセジェスタ、セリヌンテ、マザーラ観光。セリヌンテでは、崩れるままになったたくさんの神殿跡がそこここの叢(くさむら)にごろごろ。まさに”兵(つわもの)どもが夢のあと“といった風情で無常感が漂う。セジェスタでは1km離れて向かい合わせの丘に立つ神殿と劇場、マザーラではサティロス博物館の躍動美あふれる『踊るサティロス像』を見学


セジェスタ
神殿

セジェスタ
劇場

セリヌンテ
埋もれたままの神殿

マザーラ
ドゥオーモ

マザーラ
踊るサティロス像
12月6日 トラーパニ、モンレアーレ、パレルモ泊

サベリオさんの案内でシチリア島の西端トラーパ二(アフリカに最も近い)、モンレアーレ、パレルモへ。トラーパ二ではティレニア海を一望できるリニーの塔、魚市場、海辺の海岸通りドライブ。モンレアーレはドゥオーモと『キリストのモザイク画』、回廊つき中庭、パレルモではドゥオーモ、エマヌエーレ広場を見学


トラーパニ
旧市街

トラーパニ
魚市場

モンレアーレ
ドゥオーモ

モンレアーレ
モザイク画

モンレアーレ
回廊つき中庭
12月7日 終日パレルモ観光、パレルモ泊

ガイドさんなしで終日パレルモ市内観光。シチリア第1の都市パレルモはさすがにぎやか。2階建ての周遊観光バス(日本語イヤホンガイド有)、タクシー(少しこわかった!)、徒歩にて歩き回る。ノルマン王宮、サン・ジョヴァンニ・デッリ・エレミティ教会、シチリア州立美術館『死の凱旋』『受胎告知のマリア』、クアットロ・カンテイ、プレトーリア広場、マッシモ劇場など


パレルモ
オープン観光バス


パレルモ
パラティーナ礼拝堂


パレルモ
マッシモ劇場


パレルモ
プレトーリア広場

パレルモ
大聖堂
12月8日 アグリジェント、カルタジローネ、シラクーサ泊

原さんのクルマでアグリジェントとカルタジローネへ。アーモンドの花が咲き、白い小花の甘い香り漂うアグリジェント神殿の丘を半日かけて散策。小鳥がさえずり、はるかかなたに地中海がきらめく。カルタジローネとシラクーサでは、聖女マリア様祝祭日のパレードに遭遇する幸運も。 


アグリジェント
神殿の谷

アグリジェント
オリーブの木

カルタジローネ
大階段のタイル

カルタジローネ
色彩豊かな陶器の店

シラクーサ
マリア様のパレード
12月9日 終日シラクーサ観光、シラクーサ泊

ガイドなしで市内バスを利用してシラクーサを終日観光。ドゥオーモ、ネアポリ考古学公園(『天国の石切り場』『ディオニュシオスの耳』『ギリシャ劇場』)、サンタ・ルチア教会、アレトゥザの泉、サン・ジョバンニ・エヴァンジェリスタ教会 などを見学


ネアポリ考古学公園
ギリシャ劇場

ネアポリ考古学公園
ディオニシオスの耳


オルティージャ島
ドゥオーモ広場

オルティージャ島
アレトゥーサの泉

オルティージャ島
海沿い
12月10日 シラクーサ、ノート、タオルミーナ泊

早起きしてシラクーサの市場へ。原さんなじみのチーズ屋のおじさんに出来たて熱々のリコッタチーズをふるまってもらい、その後州立パオロ・オルシ考古学博物館へ。有名なランドリーニのビーナス像も見学。午後優美なバロック様式がみごとなノートへ。ノートではレアーレ門、ニコラチ通り、ノートで有名なお菓子屋さん「Cafe Sicilia」ではパテシェ修行中の日本人女性に遭遇


シラクーサ朝市
名物サボテン

シラクーサ朝市
出来たてリコッタチーズ

考古学博物館
ビーナス

ノート
バロックの眺め

ノート
カフェシチリアにて
12月11日 タオルミーナと近郊でのんびり、タオルミーナ泊

タオルミーナで、以前からぜひ行きたいと願っていたサン・ドメニコ・パレスホテル(旧サンドメニコ修道院)でティータイム、そして庭園を散策。レモンやオレンジが実り、ブーゲンビリアの花が咲き乱れ、眼下にはイオニア海が広がり、遠くには雪を頂いたエトナ山の雄姿―まるでイタリアの桃源郷のような風景を眼の奥に焼き付けて!タオルミーナの上にあるカステルモーラや映画「ゴッドファザーのロケ地フォルツァ・ダグロー村も訪れました。


サンドメニコ
回廊の中庭

サンドメニコ
花が咲き乱れるお庭

フォルツァ・ダグロー
ゴッドファーザーロケ地

タオルミーナより
夕刻のエトナ山

タオルミーナ近郊
タオルミーナの夜景
12月12日  タオルミーナ → 日本に帰国

カターニア空港から、ローマ乗り継ぎで成田へ。


シチリアを丸ごと味わう

 世界に冠たるイタリア料理の本場に行くのだから、食いしん坊の筆者としては“おいしいイタリアンに出会うこと”も、目的のひとつ。


 イタリアの食堂としては、格が上からリストランテ(高級レストラン)、トラットリア(ややカジュアル)、オステリア(大衆食堂)、ピッツェリア(ピザ屋さん)、バール(コーヒーなどの立ち飲み)などがあるのは、周知の通り。リストランテは、午後8時開店が多いので、早朝出発が多い今回の旅行では1~2回しか利用しませんでした。また、フルコース料理は食べきれないという胃袋の事情もありました。トラットリアで2品注文して2人で分け合って食べるくらいで私たちには十分満足でした。


 メッシーナの海辺のトラットリアでいただいた、ムール貝とあさりのオリーブ油炒めにはレモンをぎゅっと絞り、海の幸のパスタにきりりと冷えた辛口の白ワインを添えて。


 タオルミーナの海の見えるレストランテでいただいた、ウニのパスタ、イカ墨のニョッキ、アクアパッツア。もちろん、白ワインで。


 山には山の幸有り。ラグーサ近郊では、近くの特産イブレイ地方産豚のソテーに、炭火で焼いたソーセージ、ラグーのパスタ、名物のレモン風味ポークゼラチン、それに地元グルフィー産の赤ワインを添えて。エトナ山の近くでは、ネブローディ産の黒豚のグリル。きのこのオイル焼き。


 モツァイ島からの帰り、村にただ1軒のトラットリアでは一族の老若男女50人くらいが集まって、子どもの誕生パーティの真最中。隅の方に席を作ってもらい、アフリカ由来のクスクスとたこのサラダをほうばりながら、「ゴッドファザー」に出てくるような大家族の食事会を見物しました。


 そして、最後のお楽しみはドルチェ。ビスケット生地にほの甘いリコッタチーズを詰めたカンノーロ。グラ二ータ(温かいブリオッシュにレモンやイチゴのジェラードをのせて食べる)とカプチーノはイタリア人の定番朝食。温かいパンに冷たいジェラードの取り合わせがなんとも新鮮でした。


 名だたるワイン産地でもあるシチリア。サンサンと降り注ぐ太陽と温暖な気候、カリウムなどが豊富な火山灰土壌は水はけもよく、良質のぶどうを育てるのに最適な土地だそうです。ワイン大好きな2人は、もちろん行く先々でその土地のワインを味わいました。


 BUONO(ブオーノ)! OTTIMO(オッティモ)!! BUONISSIMO(ボ二ッシモ)!!!の連発でした。


見た!ふれた!歴史が物語ること

  島中が遺跡だらけのシチリア。フェニキア人が高度な文化を築き、ギリシャ人が壮大な神殿を作り、ローマ人が征服し、さまざまな民族が侵略しては滅んでいったシチリア。金やモザイクを施し妍を競い合って建立した大聖堂の数々。バロック、ゴシック、ビザンチン等その時代の様式を施した建造物。紀元前から近世まで、侵略と破壊、征服者の文化の構築の繰り返しが歴史の置き土産を産みました。モツィア島のフェニキア人が侵略者を迎え撃つ準備として、子どもたちの首をかき切ったという史実を聞き、その墓を前にしたとき、痛ましさに胸が疼きました。最古の昔から今日に至るまで、世界中で諍いの元となっている民族意識とはいったい何に由来するのか、考えさせられました。

陽気で親切なシチリアの人々

 私たちの片言イタリア語が通じるかも出発前の心配でした。でも、心配は無用でした。バスに乗るときは「下車駅を教えてくれるよう」運転手さんにお願いしましたが、ブルマンでもパレルモの市内バスでも、それより先に乗客のおばさんたちが教えてくれるのです。トラーパニの魚市場のおじさん、シラクーサの市場のお兄さんも片言の日本語で話しかけてくる人懐っこさ。極め付きは、バスの運転手のおじさん。私たちがチケットを持たないと言ったら、無賃乗車させてくれてしまったのです。行く先々で、土地の人たちと交流できたのも旅の面白さのひとつでした。わがなつかしのシチリアへ、もう一度とは言わず何度でもおとずれたい!!

 最後に、充実した旅をコーデネート、サポートしてくださった原さん、Grazie Mille!!

(文/S・A  撮影/K・H)